「……この件について、議論は尽くされているわ……これ以上は『意味が無い』わよ……」
「そんなことはありません! それは小町さんが勝手にそう思い込んでいるだけです!」
「……倉成つぐみ……」
「……はぁ……」
 私は大きく溜め息をついた。いつものことながら、何でこうなってしまうのだろうか。
「……武は私を愛して、私は武を愛している……これ以上、何が必要なの?」
「その前提に、疑問を感じます! 倉成さんが小町さんを愛していると誰が決めたのですか? 小町さんに迫られれば、大抵の方は怯えて心にも無いことを口にしてしまいます」
「……倉成つぐみ……」
「……はぁ……」
 再び、溜め息をつく。
 週末を利用して、月に二度ほど行なう、定例のお茶会。メンバーは私――田中優美清春香菜、茜ヶ崎空、そして倉成つぐみ。
 ある意味において、間違い探しに近いものがあるのかもしれない。人妻が一人だけ混じっていて、しかもその旦那を三人が三人とも好いているのであれば……こういう展開になることは、推して知るべし、だ。
「……空、忘れたの? 私達には子供が居るの。寂しがり屋の二人から、あなたは父親を奪うって言うの?」
「そ、それは小町さんが勝手に二人を産み落としたからではないですか。大体、その論理であれば、父親が倉成さんで無ければならない理由はありません。桑古木さんでも、その辺りをぶらついている方でもいいではないですか」
「……はぁ〜……」
 天下の大和撫子、茜ヶ崎空も、一人の恋する少女と化しては、発言に責任を持ちきれないらしい。
「……はいはい、分かったわ。じゃあ間をとって私が――」
『……なんでやねん!』
「……」
 流石はあの倉成武の愛妻と愛弟子ね。突っ込みのタイミングが絶妙だわ。
 呑気に、そんなことを考えてみた。
 
 
「……」
 私は廊下を歩いていた。白いフローリングに、二年に一度は塗り替える、眩しいまでに白い壁。鳩鳴館女子大の構内は、大体がこの色で満たされている。
 限りなく白に近い、薄いベージュ色のスーツを着込んでいる私は、この風景に溶け込んでいるように見えるのかもしれない。
「……保護色とも言うけどね……」
 小さく、呟いてみた。
 事件終結後、私は鳩鳴館女子大学教授という肩書きを手に入れていた。基本的に時間を自由に使えるし、色々と幅が利く。後始末のためにしなくてはいけないことが多い私にとって、この職は、かなり都合がいいのだ。
「……それにしても……」
 学生が多い。
 前期末の試験期間中だけあって、普段の二倍は見受けられる。彼女達はテスト範囲やら、講師陣の悪口を言い合っては、思い思いに盛り上がっている。
 私自身、喧燥は嫌いではないし、どちらかと言えば好きなのだが、この雰囲気は少し馴染まない。
「……年……取っちゃたのかな……?」
 定期試験のために勉強するなどということは、私にとって遥か昔のことだ。尤も、高校時代は、クラスメートの様に必死になって一夜漬けなんかしなくても、トップレベルの成績は残せていたけど。
 ……一応言っておくけど、自慢しているつもりはないわよ。
「……?」
 不意に、違和のある光景を知覚した。視線の先――三叉路の突き当たり近くを、少年が歩いていたのだ。年の頃で言うなら、十五か、その前くらい。小柄な身体で、切れ長の目が特徴的だ。かなり理知的に見える。
 一貫性の女子大には、相応しくない存在だ。私は興味を持ち、その少年に歩み寄った。
「……ねえ」
「……はい?」
 少年は立ち止まると、訝しげにこちらを見遣った。
「あなた……男の子よね?」
「……生物学的には一応。精神構造的にも多分そうです……」
 淡々と、事実だけを口にした。
「……あ、ごめんなさい。私は田中優――本当はもっと長い名前なんだけど、優でいいわ」
「……川崎大悟です」
 立ち尽くしたまま、感情を表に出さない。何を考えているのかが、全く読めない少年だ。
「……それでさっきの話なんだけど、男の子のあなたが何でこんなところに居るの? ここは女子大よ?」
「……父がここで助教授をしていて駆り出されました。ちゃんと入講証は持っています」
 そう言って、ポケットから一枚のカードを取り出した。大学名と学長印がしっかり記されている。一目見た限りでは本物だ。
「……川崎……あ、ひょっとして心理学科の川崎助教授の息子さん?」
「……父を御存知ですか?」
「同僚の名前を忘れるほど薄情じゃないわ」
「……」
 再び、少年――大悟君は訝しげにこちらを見遣った。
「……ああ。私はこの大学で教鞭をとってるのよ」
「……そうですか」
 まあ、普通の反応だろう。実際の年齢はともかく、二十歳そこそこにしか見えない私は、せいぜいが就職活動中の学生にしか見えないはずだ。
「ごめんなさいね。時間、取らせて。こんな所で男の子なんて見掛けないものだからつい」
「……構いません。父の方の都合が悪くなって、待たされているところですから」
「……つまり、暇なの?」
「ええ」
 相も変わらず、感情を表に出さない。私は顎に手を当て、少し考え込んだ。
「……ねえ。時間があるんだったら、私の研究室に来ない? お茶くらい出すわよ」
「……はい?」
 その時、大悟君の声が初めて上擦ったように聞こえた。
 
 
「座っていいわよ」
「……」
 大悟君は、呆然とした面持ちで、入口に立ち尽くしていた。もちろん、露骨に感情を表に出している訳ではないけど、そういう雰囲気に見える。
「……ひょっとして緊張してる?」
「……いえ。少し驚いただけです。非常勤講師だと思っていましたから……」
「ありがとう」
 若く見えるという意味に解釈して礼を言った。
 そして、部屋の真ん中に備えてあるソファに腰掛けさせる。とりあえず、お茶請けにクッキーをテーブルの上に置くと、お湯を沸かすため、コンロに火を付けた。
「紅茶でいい?」
「……お構いなく」
 大人の返答を同意と判断し、ティーポットを取り出した。茶葉は昨日、封を切ったばかりのものだから、それなりのものが淹れられるはずだ。
 熱湯をそれぞれの器に注ぎ、温めると、湯を捨てた。そして茶葉と90度くらいに冷ましたお湯をティーポットに放り込み、数分蒸らす。
 知り合いに聞きかじった程度の淹れ方だが、適当にやるよりはかなりましらしい。実際、うちに所属する生徒達への評判はそれなりだ。
「お待ちどうさま」
「……いえ」
 一言だけ断りを入れると、大悟君はカップを口につけた。
「……まあまあですね」
「……微妙な評点ね。素直に美味しいとは言えない?」
「ええ、言えません」
 きっぱりと言い切った。
「……おそらく、茶葉が若干しけってますね。ちゃんと缶に入れて保存してますか? 夏場は特に気を付けなくてはいけません」
「……」
 中々はっきり物を言う子だ。でも、こういう手合いは嫌いではない。
「……私もまだまだね……」
「……いえ……これは只の情報に過ぎませんから……知っているかいないかだけの話です」
「……それもそうね」
 私は両目を瞑ると、一口啜ってみた。言われてみると、昨日より、風味が大分劣化しているようにも思える。
「……それにしても……」
「ん?」
「……その若さで助教授とは……もしや構内ではかなりの有名人ですか?」
「教授よ」
「……」
 大悟君は言葉を詰まらせた。無理も無い。少なくても鳩鳴館女子大に於いて、二十代で教授になった前例はない。もしかすると、笑えない冗談だと思っているだけなのかもしれないけど。
「……ところで大悟君、学校はどこ? 高校生なの?」
「……浅川高校の一年生です」
「……」
 世間は狭い。ホクト君や沙羅が通ってる高校じゃない。
「……じゃあ、倉成兄妹って知ってる? 最近、編入したんだけど――」
「……知っているも何も、演劇部の先輩です」
「……」
 ここまで来ると、世間が狭いというより、何か作為的なものを感じてしまう私は狭量なのかしら……?
「……あのお二人が何か?」
「……ちょっと付き合いがあってね……」
「……そうですか」
 もちろん、ちょっとどころの付き合いではないのだけど、そこを熱く語っても仕方が無い。
「……あの二人って、あなたにとってどんな先輩?」
「……いい先輩達ですよ。見てて飽きませんから」
「……飽きない?」
「ええ……」
 意外だった。大悟君の口元が緩んだように見えたのだ。
「……そんなにあの子達といるの楽しい?」
「……そうですね。少なくても、今までの人生程つまらなくはありませんね」
「……」
 表現が面白い少年だ。
「……それにしてもいいんですか?」
「……何が?」
「……今は就業時間中でしょう? こうしてのんびりしている間にも給料は発生しているはずです」
「いいのよ」
 さらりと言ってやった。
「大学なんてところは、時代錯誤の旧態依然たる縦社会の組織なんだから。今世紀初頭に大学改革なんてやらかしたらしいけど、そんなものは全くナンセンス。タイムカードも無ければ、厳然たる勤務評価表も無いのよ。そこそこ出来のいい論文さえ書いてれば、生き延びられる訳よ。
 ……ちなみにこれは、同僚が酒の席で漏らした言葉だけどね」
「……中々、正直な同僚をお持ちですね」
 八割くらいは私が言ったんだけどね。
 真実のところは、心に留めておいた。
「……ところで大悟君、好きな娘とかいる?」
「……唐突ですね」
「あなたくらいの年頃なら、そういう話題で持ち切りなんじゃない?」
「……子供には興味ありませんから」
「……」
 完全に虚を衝かれてしまった。
「……お姉さんみたいなタイプ、嫌いではないですよ」
「ありがとう。お世辞として受け止めておくわ」
 微笑みだけを返して、軽く言い放つ。本音では、かなり嬉しかったりするのだけれど。
「でも私、こう見えて結構大きい子供がいるのよ」
「……へえ……何歳ですか?」
「十八歳」
「……」
 大悟君は再び黙りこくってしまった。おそらくは笑えない冗談だと思っているのであろう。
 付け加えるのであれば、ホクト君と付き合っていたりするのだけれど、洒落っ気の無い人間だと思われるのもつまらない。これ以上は飲み込んでおいた。
「……また唐突で何なんだけど、夢とかってある?」
「……先生みたいなことを聞くんですね」
「一応、先生よ。不良だけど」
「……そうでしたね」
 大悟君は、ティーカップをテーブルに置くと、少し、考え込んだ。
「……自分の手は汚さずに十把一からげの愚民を牛耳り、この国のトップに立つ、って言うのはどうです?」
「……中々、面白い冗談ね」
「本気ですよ」
 表情一つ変えずに言い放つ。やはり、かなり興味深い少年だ。
「……それで……」
「……?」
 唐突に大悟君に見据えられ、私はつい顔に疑問符を浮かべてしまった。
「……何で僕を呼び込んだんですか?」
「……さっきも言わなかったかしら? 男の子は珍しいし……お互い暇だったんだから別にいいんじゃない?」
 教授として、かなりの問題発言の気もするが、敢えて黙殺しておく。
「……それだけですか?」
「……?」
 言っていることが分からなかった。
「……聞いて欲しい話がある……でも、親しい人には話せない……だから自分とは無関係の人間を巻き込みたかった……その様に見受けられましたが?」
「……」
 鋭い所を突かれた気がする。
 意識的にでは無いと断言するけれど、無意識のうちにその様な意図を織り交ぜた可能性について問われれば、完全には否定できない自分がいた。
「……大悟君……人を好きになったことはある?」
「……」
 じっと、彼の二つの瞳を見据えた。今までの様に、からかいを混ぜた口調ではない。真摯に、そして真剣に彼の本音へと問い掛けていた。
「……多分、無いです」
「……多分?」
 表現に違和を感じ、おうむ返しに問い返した。
「ええ……もちろん僕も初恋くらいはしてます……でもそれは自己中心的なエゴイスティックなもの……自分さえ満足なら良かったんです……。
 でもお姉さんが問うているのは、そう言うものでは無い気がしたので……だから、多分、です」
「……」
 この私が、全て見透かされている気がした。
「……お姉さんはあるんですか?」
「……」
 そう問わせることが目的だったはずなのに、一瞬、言葉に詰まってしまった。
「……ええ。流石にこの歳ともなると、大人の恋の一度や二度くらいはね……」
「……本当に複数回ですか?」
「……」
 ……我ながら余計なことを口にしたわね……。
「……一度だけよ……それも一方的なもの……相手はもう結婚してるわ……」
「……」
 冷静に整理すれば、ややこしい話だ。私には子供が居て、でも、恋した相手とは結ばれていなくて……大悟君が私に夫がいると脳内補完すれば、愛情が無いように聞こえただろう。
 尤も、シングルマザーという可能性に気付いてくれるかもしれない。彼ほどの知性と教養があれば、真実へと辿り着く可能性も皆無ではない。
「……苦しいんですか?」
「……今の所はそうでもないかな……もう一人、その旦那を好きな人がいるんだけど、奥さんを含めて三人で一緒にバカやるのは結構楽しいし……必至になって考えないようにしてるだけな気もするけど……」
「……随分ともてるんですね、その男性……まるで倉成先輩だ……」
「……」
 まさか、実の親子だとは言えない。
「……でも、時たま耐えようも無く寂しくなることはあるけどね……夜、ふと目を覚ました時、横には誰もいなくて……何で私は一人なんだろうって、外が白むまで考えてたことは一度や二度じゃないわ……」
「……そうですか……」
 小さく、相槌だけを打った。
「中々、興味深い環境におられるんですね……」
「……それは知的好奇心? それとも、思春期の男の子として?」
「両方です」
 即答した。
「……四角関係――いえ、三角関係が三つ、ですね……男としては羨ましいと言っていいんですかね?」
「……どうかしら? あいつ、かなり鈍いから何処まで気付いてることやら……」
「……そんなところまで倉成先輩に似てるんですか……」
「……」
 こういうのは一子相伝というのかしら……?
「……人間って不思議な生き物ですね」
「……え?」
 不意を突かれ、間の抜けた声を上げてしまった。
「……恋愛感情とは本来、生殖に伴う感情のはずです……つまり、自分の遺伝子を遺すことが至上目的であり、そのために手段を選ぶ必要はない……」
「……」
 何気無いはずの言葉が、深く心に突き刺さった。
「……でも、人間の取る行動は不思議です……己を捨ててでも相手を守りたいと思い、又、自分とは関係の無いはずである、『友人』の存在さえも気に掛ける……これがホモ・サピエンス種独特のものであるかは知りませんが、一般的ではないはずです……もちろん、こんなことを全く無視した人がいるのも事実ですけど……」
「……たしかに……私の知り合いにも居たわ。愛する人を守るために、百メートル以上もある海底に飛び込んだ真性のバカが。それも、二人も」
「……」
 笑えない冗談だと思われようと、実話なのだから仕方がない。
「……僕は、そこまで人を好きになったことはありません……現状では、一次欲求としての性欲くらいですかね」
「……へえ……あるの?」
「……人並みくらいには」
「……じゃあ、今、私って結構危険?」
「……大丈夫ですよ……理性には自信がありますから……」
「ありがとう」
 女性としての魅力を感じるという意味に解釈して、礼を言った。
「……話を戻しますけど、そんな僕に言えることは一つだけです」
「……一つ?」
「ええ……それもとてつもない一般論です」
「……?」
 一瞬の内に、彼が言おうとしていることを幾通りも想像してみる。しかし、そのどれもがすぐさま霧散してしまい、考えとして構築出来なかった。
「……お姉さんの好きにすればいいんです……それが、唯一絶対の解決策です」
「……」
 単純明解だった。子供でも理解できる、究極無比の一般論。
 私は、頭をハンマーか何かで叩かれたかのような衝撃を受けていた。
「……まあ、もちろん、欲望の赴くまま、と言うのは社会に対して迷惑なので、節度を守っていただきたいですけど……お姉さんの顔を新聞で拝見するというのは、あまり気分のいいものではありませんし」
「……それ……冗談?」
「……つまらない男なもので」
 感情を表に出さないまま言い放った。やはり、かなり食えない少年だ。
「……それでは。そろそろ父との約束の時間なので」
「あ、もうそんな時間?」
 左手の時計に目をやると、小一時間程が経っていた。
 ちなみに、この間、私に発生した給料の額は……秘密ってことにしておいて。
「今度来る時には、もう少しまともな紅茶を淹れられるようにしておくわね」
「……期待してます、お姉さん」
「……」
 少し、違和を感じた。
「……そう言えば、私のこと、先生とか、田中さんとかって呼ばなかったわね。ひょっとして、呼びにくい?」
「……先生の方がお好みでしたか?」
「……正直言うとあまり好きじゃないかもね……そんな大層なものじゃないわよ私は……単なる永年不良娘」
「……でしたら問題はないでしょう」
「……かもね」
 小さく、苦笑した。
「……では」
 大悟君は立ち上がると、扉へと向かう。そして、私に向けて一礼すると、退室した。
 
 これが、私と大悟君の、初めての対面。
 
 数分後、ゼミの生徒が怒涛の様に流れ込んで来て、『少年狩り』について、熱く問いただされてしまったんだけど……そこの所は、笑い話で済ませてくれると嬉しいかも……。
 
 
「……議論は平行線ね……と言うことは、現状を維持し続けるしかないと言うことよ……」
「現状維持と言うことは、小町さんが圧倒的に有利な条件ではないですか! その様なことは見過ごすわけにはいきません!」
「……倉成つぐみ……」
「……」
 数日後、再び、お茶会で集まった際の一コマである。
 考え様によっては、この二人はとても面白い。良くも顔を突き合わせるたびに、同じ話題で盛り上がれるものだ。ある意味において、共通の趣味と言えなくも無いのかもしれない。
「ねえ、つぐみ、空……」
「……何?」
「……何でしょうか?」
「……」
 『何』の部分が、見事なまでに同調した。ひょっとすると、芯の部分は物凄く似ているのかも知れない。
「……一応言っておくけど、空が悪いのよ。終わった話を何度も蒸し返すから――」
「それはあまりに自分本意過ぎます! 私にも倉成さんを均等に頂く権利があるはずです!」
「……」
 三枚におろされた倉成を想像し、少し、気持ち悪くなった。
「……私……決めたの」
「……決めた、とは……何の話でしょうか?」
 空が思案顔で、問い掛けてきた。
「……私も参戦するわ……その討論」
『……はい?』
 再び、同調した。
「ふっふっふ〜、鳩鳴館女子大在学歴八年、株式会社LeMUの研究者として九年もの間、科学者一筋だった、生粋のディベート好きをなめるんじゃないわよ〜。
 つぐみ! 理路整然とあなたを論破して、倉成を奪取してみせるわ!」
「ちょ、ちょっと優!?」
「覚悟しなさい!」
 虚を衝かれたのか、二人は完全に呆けた表情のまま固まっていた。
 
 ……そう。これが私の選択。
 馴れ合いと人は言うのかもしれない。だけど、これがきっと私にとって最良の選択。
 もちろんそれを確かめる術は、二次元的視覚しか持ちあわせていない私には無いのだけれど……信じることが、現実となる。何処かで聞いた学説が、頭を掠めた。
 
 私はニンマリと底意地の悪い笑みを浮かべると、じっと二人のことを見据えた――。
 
                    了
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